Vivian Maierという幻の写真家。
ヴィヴィアン・マイヤーという幻の写真家がいます。写真家といっても”プロ”ではなく”アマチュア”です。
しかし、写真集も話題になったし、ドキュメンタリー映画も公開されたりしたので、ご存知の方も多いでしょう。
僕がこのヴィヴィアンマイヤーを知ったのは、たまたま行った映画館で何の気なしに「ヴィヴィアンマイヤーを探して」という映画を見たのがきっかけです。映画の感想は衝撃でした。「こんな写真家?いるんだ」と。
今日は奇妙な写真家ヴィヴィアンマイヤーを事について書きたいと思います。
ヴィヴィアン・マイヤーは、1926年2月1日、アメリカのニューヨークに生まれ、母はフランス人で、父はオーストリア人です。ニューヨークやフランスで暮らしていたこともありましたが、1950年代にはシカゴに移り住み、以後40年乳母として生計を立てます。写真家として活動していたわけではなく、乳母という職業のかたわら、ほとんど「趣味」みたいな形で写真を撮っていたのです。
生涯独身で、孤独を好み、誰にも心を開かず、偽名を使うなど、ヴィヴィアン・マイヤーは相当に変わった人だったようです。それでも、狂気的に15万枚以上写真を撮り続けた彼女が、一枚も公表することなく世を去ったことは、現在でも謎とされています。当時、デジタルカメラなんてありませんから、フィルムカメラでしかも彼女が使用していたカメラは※ローライフレックス2眼レフカメラ という手間のかかる中判カメラで撮っていましたから、15万枚以上撮るというのはどれだけ大変なことか想像できますよね、、、本当に写真が好きでないとできません。
※この二眼レフカメラは現在のカメラのようにオート撮影ができるわけではないから絞りとシャッタースピードを適宜合わす必要があったし無論ピントもオートフォーカスではないから手動で合わさなければいけません。さらにフィルムは1本で12枚しか撮れないから1回シャッターを押すにもコスト面も含めそれなりの覚悟というか明確な意志が必要だったし、数時間街を歩けばフィルムの入れ替えを何度も行わなければならなかったでしょう。そしてそれも現在の感覚ではかなり面倒な作業となります。
では、なぜ彼女は撮った写真を世に公表していないのに”乳母”から”写真家”と呼ばれるようになったのか、、、
それは没後の2007年、シカゴ在住のある青年、ジョン・マルーフがオークション会場にて、彼女の遺品ともいえる大量のネガを手に入れたことから始まりました。
この青年がネガをデジタル化してネット(ブログ)にアップしたところ大賛辞の嵐。そしてこの発見を主要メディアが絶賛。あれよあれよと世界中に広まり発売した写真集は全米売上No1を記録、映画はアカデミー賞にノミネートされました。
没後に作品認知され評価されるとは、まさに写真家版のゴッホとも言えるでしょう。
彼女が撮る写真はファッションフォトなどではなく主にシカゴやニューヨークの街並みや、そこに生きる人々を撮影していました。
彼女の撮る写真は何がすごいと評価されているのか、、、
まずはその構図です。この写真集に収められている写真の多くが、被写体に真正面から向き合って撮られた正方形のストリートポートレートです。王道でストレートな写真と言われています。ストリートで真正面から近距離で被写体に向き合えるのは、相当な度胸があると言えます。
上述したように、彼女はアマチュアの写真家で、また当時それほど多くの写真を見る機会はなかったはずです。
ましてやプロの写真家に師事していたわけでもありません。おそらく完全に独学で写真撮影を身につけたはずなのです。
まさに天性のセンスの持ち主です。
彼女が評価される理由はそれだけではありません。
彼女の写真には、どこかユーモアがあふれていてニヤリとさせられるものが多いのも特徴の1つです。
それは老人であったり子供であったり、街で生きる普通の人々の日常を残したものなのですが、どれも「決定的瞬間」と言えるもので、路上でどのようにこれを捉えたのか不思議です。路上で知らない人にいきなり2眼レフカメラを向けられて引き出せる写真ではないように思えるのです。「面白い」と思ったものに、何の躊躇もなく「ストレートに」カメラを向けている、背景が感じ取れます。
映画の中で、子どもが車に轢かれた時でも平気でその状況を撮っていて、「ヴィヴィアンは居る次元が違う、いつでも平然と撮る」と言っている人もいました。今でも忘れられないフレーズです、、、
ヴィヴィアンマイヤーから学ぶことはたくさんあります。
それは「自分のスタイル」を貫くこと。自分の評価を気にする現代。
他人の評価は、自分が納得できるまでスタイルを貫いて気にすればいいのです。
SNSが主流の今の時代、物の良し悪しがはっきりとはわかっていなくて、いいね!や favorite が付いたり、記事にブクマが付いたりするとその物がよく見えてきてしまったり、逆に反応が悪いとその写真が悪く見えてきたりしてしまうのです。
おそらく今の時代にヴィヴィアンマイヤーが生きていたらSNSなんて気にしなかったでしょう。
その彼女のスタイルは見習うべきではないでしょうか。
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